前回は、寄与分を中心に特別寄与料との相違点等について触れましたので、今回は特別寄与料に関して述べてみたいと思います。特別寄与料は、被相続人(亡くなった方)の看護や介護、また事業への貢献度合いを金銭で評価する制度です。対象となるのは、相続人以外の親族です。親族とは3親等内の姻族、6親等内の血族、配偶者で、この範囲内の方達のうち相続人に該当しない方(例:長男の嫁等)が該当します。

 特別寄与料を請求できる方は、1)被相続人から労働の対象として報酬を得ていないこと 2)被相続人に対して療養看護や労務の提供を行っていた方だけ 3)特別の寄与という場合には、被相続人との関係性が薄く、単に手伝った程度では特別の寄与にはあたらないとされています。

 最終的には、相続人や裁判官などの判断に委ねられることになるため、その根拠を示す資料が必要になります。その事実を客観的に証明できる資料として介護保険被保険者証や診断書、介護日誌などが考えられます。被保険者証や診断書は、揃えるのにそれほど労力を伴うものではないですが、日々の介護日誌となるとかなりの労力と根気が求められるため、ハードルが高く認めてもらうのはなかなか大変です。療養看護型の特別寄与料のは以下のとおりになります(今回は事業従事型は割愛させて頂きます)。

 療養看護型の特別寄与料は、介護日数×介護報酬相当額×裁量割合で算出されます。a)介護日数:介護施設や介護サービスを利用せず、自宅で介護を行なった日数を指します。b)介護報酬相当額:介護保険制度に基づく報酬基準額で、要介護度に応じて決まります(1日:5000円〜8000円程度)。c)裁量割合:親族による介護の内容を考慮し、0.5〜0.9の割合を掛けて算出します。介護をしていた親族は、介護の専門家ではないため、介護報酬をそのまま適用することは適切ではないため一定の割合を掛けて算出します。

【元・ケアマネの視点】

 介護を仕事として割り切る場合と、家族が行う介護は全く別物です。特に認知症の親を介護するとなると、一日中目が離せず家事や仕事が思うように進まないだけでなく、急に大声を出したり暴れたりする場面に直面することもあります。在宅介護では自分の時間がほぼ取れず、疲労とストレスが蓄積し、毎日が睡眠不足の状態に陥りやすいのが現状です。こうした厳しい介護の実態を踏まえると、特別寄与料は単に介護をしたことの報酬ではなく、家族の献身に対する感謝を形にしたものと考えるべきではないでしょうか。この制度を利用する際には、家族の努力を正当に評価し、専門家である弁護士や司法書士などにも相談されることをお勧めします。元・ケアマネとして、特別寄与料の適切な活用が、介護への社会的理解を深める一助となることを願っています。