今回も前回に続いて介護休業給付金について、その続編という形で取り上げたいと思います。介護休業を取得して従業員(介護者またはこれに準ずる方)が休みを取る時は、会社は従業員から労務の提供が得られないため、原則として会社は従業員に対して給与を支払う義務は発生しません(ノーワーク•ノーペイの原則)。そこで、その間の収入補償として設けられたものが雇用保険の介護休業給付金です。産前産後休業や育児休業と違って、休業中の社会保険料が免除される仕組みは取られておらず、会社は家族介護を行う従業員に対して、会社が行う社会保険の手続きはこの雇用保険の介護休業給付金に関連する手続きのみとなります。
介護休業に対して社会保険料の免除がない理由は、制度設計の目的自体が、この休業は従業員がその家族を介護するため、一定期間休業する権利を保障(家族ケアを行う時間確保)したものであることです。つまり、経済的支援や社会保険料の免除が目的ではないということです。また、社会保険(健康保険や厚生年金保険等)は、加入者が保険料を負担し続けることで成り立っているため、休業期間中にも保険料の支払いが求められることで被保険者全体の公平性を保たれるよう設計されています。そのほか、各自治体でも介護休業中の経済的負担を軽減するための各種支援制度が設けられているということも、その一端を担っているかと思います。
本題に戻しますと、同給付金が支給される期間(日数)は、育児•介護休業法で定める介護休業期間と同様、対象家族1人につき93日までです。なお、介護休業を分散して取得した場合には最大3回に分けて支給されます。この場合の支給日数の上限は通算93日となります。
介護休業給付金を受給するためには、介護休業を開始した日の前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が通算して12ヵ月以上必要となります。12ヵ月以上ない時は、賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上の月を1ヵ月として取り扱うことになります。雇用保険の被保険者ではない従業員は介護休業を取得しても同給付金の支給対象にはなりません。そのほか、介護休業を取得した際に退職が予定されていたり、確定している従業員は支給対象にはなりません。
介護休業給付金は、介護休業をした日について支給されます。1日当たりの額は、原則として介護休業をする前6ヵ月間の給与の合計額を180日で割った額(賃金日額)の67%です。介護休業中に給与の支払いを受ける場合には、支給額が減額されたり、支給されなかったりするので注意が必要です(介護休業給付金①参照)。
また、介護休業を分割取得する場合について、例えば対象家族1人について介護休業を2回以上に分けて取得した際は休業開始時賃金日額は介護休業ごとに登録します。この場合、1回目の介護休業を取得後、※介護休業短時間勤務制度を利用することで給与額が減るような時は、2回目の賃金日額は1回目よりも低くなる可能性があります。休業開始日前2年を遡っても賃金日額の算定が難しい場合は、直前の介護休業に伴う賃金日額を用いることになっています。
※介護短時間勤務制度=介護休業とは別に対象家族1人について、利用開始日から最低でも3年間はその中で少なくとも2回は利用できる制度とすることが大事です。
指針によれば、「短時間勤務の制度は、労働者がその要介護状態にある対象家族を介護することを実質的に容易にする内容のものであることに配慮すること」と示されているため、通常の所定労働時間が8時間の場合は2時間以上、7時間の場合は1時間以上の短縮となるよう所定労働時間の短縮制度を設けることが望ましいとされています。
【元•ケアマネの視点】
育児•介護休業法の介護休業は、対象家族1人について93日まで取得できますが、例えば福利厚生の一環として例えば5ヵ月間、育児•介護休業法を上回る介護休業期間を設けている場合、支給申請書の提出期限は、各介護休業終了日(介護休業期間が5ヵ月間の場合は、介護休業開始日から3ヵ月〔93日〕を経過した日)の翌日から起算して2ヵ月を経過する日の属する月の末日になります。介護休業期間が、育児•介護休業法を上回る期間であっても変更されないため、介護休業の途中であっても給付金の申請を行う必要がある点にはご注意下さい。